「顔たち、ところどころ」は2018年に日本で公開されたフランスのドキュメンタリー映画です。
ヌーヴェルヴァーグの祖母といわれる87歳の映画監督アニエス・ヴァルダと、33歳の写真家でアーティストのJR。
54歳差の2人は一緒に映画をつくることに。
2人はスタジオ付きトラックに乗ってフランスのあちこちを旅し、その土地で出会った人々の『顔』を撮影していく、そんなちょっと変わったロードムービーです。
あらすじ
一緒に映画をつくることになったアニエスとJRは、車に乗って旅に出た。
2人の乗るトラックは後部が撮影ブースになっていて、撮ると5分で大きく引き伸ばされた写真が出てくるというユニークな車。
アニエスは人々の話を聞き、写真を撮る。
人生、仕事、ときには昔の恋物語を。
人それぞれに歴史がある。
そして、撮影し大きく引き伸ばされた写真を、訪れた街の建物の壁などに貼っていく。
さまざまな顔、そして人生
各地を周り、そこに暮らす人々の顔を撮影していく2人。
取り壊される坑夫住宅の街で一人残り暮らすおばあちゃん
かつての坑夫たちと彼女の写真をアパートの壁に貼った。
それを見たおばあちゃんは言葉も出ず涙ぐむ。
広大な800ヘクタールの農地を一人耕す農夫
南仏で出会った昔の恋物語
カフェで働く美人なお母さん
工場で働く人々、今日で退職するという男性
ゴーストタウンに集まった人々
1人暮らしの芸術家
ずっと無職年金暮らしの75歳の男性
角のないヤギを飼う農夫
港湾労働者の妻たち・・・
アニエスとJR
87歳と33歳、54歳差というまるで祖母と孫のような2人。
しかし、2人の関係はあくまで対等だ
一緒に旅をする中で、けんかもする。
アニエスはメガネをかけている人に会うと、撮影前に必ず言う
「メガネをはずして」
でも肝心の旅のパートナーのJRは決してサングラスをはずそうとしない
あるときアニエスは相変わらず眼鏡をかけたままのJRに
「不愛想だわ、暗幕を張ってるのと同じ もうウンザリ！」とブチ切れ。
するとJRは
「そっちこそ、しつこいよ」
2人の雰囲気は険悪になる。
しかし、しばらくすると2人は笑顔で車に乗り込んでいる。
等身大の2人の関係がなんともほほえましい。
そして感動のラストへ
浜辺に巨大なトーチカがあった。
その浜辺は、かつてアニエスが若き頃写真家として撮影をした場所でもあった。
トーチカに何を貼るかを考える2人。アニエスが若いころに撮影した思い出の写真を張ることになった。
しかし一晩たって再び訪れると写真は波ですっかり流されていた。
2人の映画の撮影もそろそろラストへ向かおうとしていた。
アニエスは、旧友でもあるジャン = リュック・ゴダールの家を訪れようとJRに提案する。
約束までの時間、落ち着かない様子の2人。
そして、2人はついに、ゴダールの家を訪ねるのだが・・・
感想
フランスの田舎町を訪ね、人々の写真を撮り、それを大きく引き伸ばした写真をその街の巨大な建物の壁などに貼っていく。
その壁に貼った人々の写真がこの映画の見どころの１つとも言えるのだが、その写真が、街の雰囲気とぴったりなじんでなんともかっこいいのだ。
１つ１つの作品がまさにアート！
写真を撮る前にアニエスが人にインタビューするのだが、1つ1つのエピソードは短いものだけどその話を聞いたあと大きく引き伸ばされた写真を見るとその人になぜか親しみを感じるのが不思議。
自分の写真が壁に貼られて、その壁を見た時の人々の反応もいい。
満足気な人もいれば、はずかしそうにするものもいれば、ひどい顔と言うものもいるが
その顔は、どこか一様にうれしそうだ。
自分の写真が大きく飾られるというのは、本能的にうれしいものなのかもしれない。
最後はあのヌーヴェルヴァーグの巨匠ジャン = リュック・ゴダールの家を訪れるという展開にも驚かされる。
見終わったあとに幸せな気持ちになれるそんな映画でした。
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■顔たち、ところどころ
2017年／フランス
監督：アニエス・ヴァルダ、JR
※この記事の配信情報は2022年4月8日に更新しました。配信は終了する場合もありますので、最新の配信情報はU-NEXT公式サイトでご確認ください。