日本社会に将来不安が渦巻く今、「子供の貧困」についてとりあげたNHKスペシャル「見えない貧困~未来を奪われる子どもたち~」(2017年2月放送)を改めて視聴してみました。
2017年2月12日放送 司会 高橋みなみ/キャスター 鎌田靖
放送内容
子どもたちの間で見えない貧困が広がっている。
日本では6人に1人の子供が「相対的貧困状態」に置かれている。
しかし、これまで具体的に子どもたちがどのような困難に直面しているかはわかっていなかった。
そこで大阪、東京などの各自治体が聞き取り調査を開始、詳細がわかり始めている
調査から見えてきたのは、子供が当たり前に持っているはずの物、人とのつながり、教育の機会、が奪われていることだった。
相対的貧困とは?
相対的貧困とは収入がその人が暮らしている社会での普通の生活水準より下回っている状態を言う
収入が中央値の半分以下が相対的貧困層とされる。
地域時代によって異なるため絶対的ではなく相対的貧困と呼ばれる。
目安として、一人世帯で122万円/年
両親と子供2人世帯で244万円未満。月収にすると、20万円程度になる。
剥奪指標
2017年1月大阪で大規模な実態調査が行われた。
その大規模な調査で新たな指標が採用された。
それが「剥奪指標(はくだつしひょう)」
経済状況が標準的な家庭に比べて、貧困状態の家庭の子供たちが何が奪われているのかを調べた。
標準的な家庭と「困窮度1」の相対的貧困家庭をさまざまな生活の分野で比較した。
たとえば、「病院に行かせることができない」という質問には
標準的な家庭0.6%に対し、困窮度1の過程で7.7%
「家族旅行に行けない」と答えた世帯は標準的な家庭で7.8%に対して、困窮度1の過程では46.2%にものぼった。
・習い事、学習塾に通わせられなかった
・誕生日を祝ってもらえなかった
・本を買ってもらえない
他にもさまざまな指標で差が見られた。
特に、本など、子どもの知識を深めるためのものを購入する機会が標準的な家庭に比べて極端に少ないことがわかった。
調査から子供が当たり前に持っているはずの物、人とのつながり、教育の機会、が奪われていることが明らかになった。
一方、テレビ、スマートフォン、テレビ、ゲームなど子ども同士のつきあいやコミュニケーションに必要なものについてはほとんど違いが見られなかった。
そのため、一見外からはわからないという状況も生んでいる。
さらに貧困により奪われているのは物だけでなく、人とのつながりのはく奪。
家族や人とのつながりはこの社会で生きていくための必要な土台
当たり前の経験が奪われてしまっている。親が子供の将来について考える余裕がないことが原因だ。
単にお金がないだけでなく、時間がない、疲れていて精神的余裕がないことが原因でさまざまな機会がはく奪されているのだ。
子供の様子を見てあげる余裕がなかったり、日々の当たり前にあるはずの言葉がけ「がんばっているね」「かわいいね」などの言葉もなく、会話もなくなっていく。
番組では相対的貧困状態に置かれている子供たちが出てくる。
非正規の仕事をする母親を助けるためにアルバイトを平日4日、休日もかけもちしている女子高生、
母親に代わって毎日家事をしている小学5年生の女の子、
塾や習い事に通えず、高校進学後の部活動もあきらめた中学3年生
高校入学のため教育ローンを組まざるを得ない学生
彼らの大人びた言葉が印象的だった。
まとめ
調査により、貧困家庭が子供に本を買えないなど知識を深めるためのものや経験が幼いころから十分に与えられていないことがわかった。
それにより、知識や勉強意欲に差が出るなど、本来環境が整っていれば違った結果になったかもしれないところで差がついてしまう。
結果として勉強についていけなかったり、自分の好きなことをやらせてもらえないなど複雑な要因がからまって自己肯定感が下がっている現状もあきらかになった。
教育の機会の差は子どもの将来にも大きな影響を及ぼすものである。
貧困の問題が、単にお金がないというだけの問題ではないことが明らかになった。
・物的資源の欠如
・つながりの欠如
・教育・経験の欠如
当たり前の権利が奪われることで子供の精神面にも影響を与えることがわかってきた
子どもの貧困を放置すると
・進学率の減少
・非正規雇用の増加
・収入の減少
など将来にも大きな影響を及ぼしていく。
アンケートで見えてきた子供の自己肯定感の喪失。
とくに親が時間的精神的余裕がないことが原因で子供に声掛けする時間が少ない傾向があるという。
小学生、中学生といえどもまだ幼く、親に甘えたい年代である子どもたちが、親から好きだよ、愛している、あなたのことを気にかけている、というようなメッセージのこもった声かけがもらえなかったりして寂しい思いをしている、というところがせつなかった。
2020年1月28日まで配信予定