観察映画という手法で撮られたドキュメンタリー「選挙」「精神」などの作品で知られる想田和彦監督。
観察映画第1弾の『選挙』は自民党公認候補として出馬した男性のドブ板選挙活動を追ったドキュメンタリー作品。
観察映画第2弾の『精神』は、これまでタブーとされてきた精神科にカメラを入れ、モザイクなしの顔出しでありのままを映した衝撃作です。
『精神』で想田和弘監督は第13回釜山国際映画祭の最優秀ドキュメンタリー賞を受賞、第5回ドバイ国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。
台本・打ち合わせなし、ナレーションなし、など観察映画とよばれる手法で撮り続ける想田監督。
2018年公開の第68回ベルリン国際映画祭フォーラム部門への正式招待された観察映画第7弾『港町』も話題となっています。
現在、動画配信サービスU-NEXTでは想田監督の観察映画過去6作品を見放題で配信中です。
「選挙」(2006年)
「精神」(2008年)
「Peace ピース」(2010年)
「演劇1」(2012年)
「演劇2」(2012年)
「選挙2」(2013年)
31日間の無料トライアル利用で6作品すべて無料で視聴できます。(2021年11月7日まで配信予定)
観察映画とは?
・台本なし
・事前のテーマ設定なし
・被写体へのリサーチなし
・事前の打ち合わせなし
・ナレーションなし
・テロップ、音楽もなし
などを基本姿勢としていて、撮る際は台本はもちろん、あらかじめテーマも決めないという想田監督。
そこで起こる事象をつぶさに観察し、撮影するという手法で撮られたドキュメンタリー作品です。
第1弾『選挙』(2006年)
想田和弘監督による観察映画第1弾「選挙」はドブ板選挙ともいえる選挙活動のありのままを追った観察映画です。
2005年、ひょんなことからコイン商を営む「山さん」こと山内和彦さんが自民党公認候補として、川崎市議会議員補欠選挙に出馬することに。
山内さんは立候補する前は切手コイン商という異色の経歴の持ち主。
コイン商を営む彼がなぜ自民党公認候補として立候補することになったのか、など詳しいナレーションなどは一切なく、ある意味淡々と選挙活動を追っていく作品です。
選挙のために川崎市に引っ越してきたという山さんはいわゆるよそ者。
地元議員や秘書たちによる激烈な戦闘態勢が組まれ、ドブ板選挙が展開されていきます。
第2弾『精神』(2008年)
精神科「こらーる岡山」に集う患者をモザイク一切なしで観察した作品。
精神科患者を顔出しで撮影するのは異例。しかし、顔出しでなければまったく違う作品になってしまうと想田監督は言います。
病気に苦しみ自殺未遂を繰り返す人、病を患いながら哲学を深めていく人。
正気と狂気の境界線とは?を問いかける衝撃作。
第3弾『Peace ピース』(2010年)
監督の義父でもあり、福祉車両の運転手・柏木寿夫は自宅の庭にやってくる野良猫に餌をやっている。悩みは餌を取っていくよそ者の泥棒猫。
一方、NPOを運営する寿夫の妻・廣子は国の予算削減と夫の餌付けが悩み。
毎週、生活支援として91歳になる橋本至郎のもとを訪ねている。
猫と人間の日常を通して平和の意味を問う。
第4弾『演劇1』(2012年)
劇作家・平田オリザと青年団の創作現場にカメラを向け「平田オリザの世界」を徹底解剖するドキュメンタリーの第1弾。
第4弾『演劇2』(2012年)
平田オリザの世界観を徹底解剖するドキュメンタリーの第2弾。芸術関連予算が縮小される中、平田の戦略は「演劇が社会にとって必要不可欠である」と世間に納得してもらうこと。
演劇は21世紀を生き残れるのか?
第5弾『選挙2』(2013年)
『選挙1』(2006年)では自民党公認候補だった「山さん」が、2011年完全無所属で出馬。
「脱原発」を掲げた山さん怒りの再出馬を追う。
選挙費用総額8万4720円。金なし、コネなし、看板もなし、の選挙に挑む。
U-NEXTでは現在これら6作品を一挙見放題で配信中!(2019年10月31日まで)
31日間のトライアルですべて無料で見ることができます。
※トライアル終了までに解約すれば料金はかかりません。
『選挙1』を視聴
以前から観てみたいと思っていた想田和弘監督のドキュメンタリー作品。
私も入会しているU-NEXTで過去作一挙6作品が見放題配信となりました。
それまではなかなか動画配信しているところもなく、DVDなどを買わないと見る機会もなかったのですが、さすがにDVDを買うのもな~と思っていたところだったので見放題での配信はうれしいです。
まずは観察映画第1弾の『選挙1』を視聴。
中心人物となるのは選挙に関してズブの素人の「山さん」こと山内和彦さん。
切手コイン商を営んでいたという人物で補欠選挙に出馬することになり、そのために川崎市に引っ越してきたという、ある意味よそ者もあります。
そのような中、選挙に当選するためには、ちょっとした悪い評判、が命取りになってしまう。
それゆえ、なんだか変に丁寧な態度にでてしまったり
時には電柱にまでお辞儀せよ、みたいな変な雰囲気になって来る。
そして、握手の仕方、おじぎの仕方にまでケチをつける後援者の人々。
そしてある時、奥さんはある議員から「議員の奥さんになるんだから会社を辞めて夫をささえたら?」と言われてしまう。
その場では笑ってとりつくろう奥さんだったが、
山さんと2人きりになった車内で奥さんの怒りが爆発!
「あんたがしっかりしないから私がこんなこと言われるんだよ!」
よくこんなシーンとれたなというくらいリアルすぎる夫婦喧嘩(笑)
たぶん私も奥さんの立場だったらそんなこと言われたら山内さんにガンガン当たってしまいそう(笑)
まさにドブ板活動とも言われる選挙活動をそのままカメラは捉えていく。
そして最後は小泉純一郎元総理(撮影当時は現役大臣)が応援演説にやってくることで選挙期間1番の盛り上がりを見せる。
感想
たんたんと選挙を追うという、一歩間違えばただのつまらないものになってしまいそうな題材が、主人公の山内さんの人柄ゆえか、なんともコミカルな作品に仕上がっています。(コミカルと言っては失礼なのかもしれませんが)
この映画選挙は見る人によってどんな作品としても楽しめます。
山内さんのキャラクターを楽しむもよし、日本の選挙について考えてみるもよし、
選挙を通してにじみ出る夫婦関係について考えてみるのもよし、
見終わるとなんだかもう1回見てみたくなるそんなドキュメンタリーでした。
結果として撮影の舞台となった補欠選挙では当選した山内さんですが、見終わって気になるのはその後、山内さんはどうなったのか?というところ。
2005年の選挙と、随分前の撮影ですが、現在の山内さんに関しては調べてみるとあまり詳しい情報もなく、政治家としては活動していないようでした。
そのことからもなんとなく、彼のその後の前途多難さが想像できてしまいます。
※2011年には脱原発をかかげて無所属で再出馬。その様子は「選挙2」に収められています。
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※この記事の情報は2019年2月6日時点でのものとなります。