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ドキュメンタリー映画(日本)

想田和弘監督がタブーに挑んだ衝撃作『精神』を観た感想。観察映画第2弾は精神科にモザイクなしでカメラを入れたドキュメンタリー

2019/02/10

想田和弘監督の『精神』は岡山にある精神科診療所「こらーる岡山」に通う精神疾患を患う人々を撮影したドキュメンタリー映画です。

 

前作の観察映画第1弾『選挙』が高く評価された想田監督の観察映画第2弾となります。

これまでタブーとされてきた精神科にカメラを入れ、患者の方々をモザイクなし(顔出し)で撮影。

精神病の患者さんを顔出しで撮影し、全国的世界的に映画として公開するということはタブーなのではないか?などと議論となった作品でもあります。

この作品は
・釜山国際映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞
・ドバイ国際映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞
・香港国際映画祭 優秀ドキュメンタリー賞
・マイアミ国際映画祭 審査員特別賞
など数々の賞を受賞しています。

どんな映画?

岡山県にある精神科診療所「こらーる岡山」へは統合失調症やうつ病、躁鬱病などの精神疾患を患う人々が通ってくる。

そこへ想田監督がカメラを入れ、2005年の秋と2007年の夏、合計約30日間撮影。

台本はもちろん、事前の打ち合わせなども一切なし。

「こらーる岡山」は精神科医の山本昌知先生が患者たちとともに1997年に設立した診療所で、そのたたずまいはまるで古民家のよう。

そこへカメラを入れ、患者さんたちやスタッフの様子を撮影。時には監督が患者さんに質問したり会話をしたりする。

自殺未遂を繰り返す人、幻聴が聞こえる人、

赤ちゃんが亡くなってしまったいきさつを淡々と語る女性

子供と離れて暮らし手紙を楽しみに待つ母

長年病気を患う中で独特の世界観や哲学を築き上げている人

精神病患者という一言ではくくることとでできないさまざまな人たちが登場する。

視聴してみて感じた事

実はこのドキュメンタリーを観る前、

「精神病患者の方をモザイクなしで映したタブーに挑んだドキュメンタリー」

という映画の宣伝文句のような言葉を聞いて、ちょっと観るのを身構えてしまうような気持がありました。

観たいと言う気持ちと観たいのに気が重いという気持ちがあったというのが正直なところです。

しかし、見始めたらそんな気持ちは吹き飛び、2時間があっという間でした。作品として面白かったし、そこにある世界にくぎづけになってしまった、という表現が1番適切かもしれません。

まず、予想外だったのがみなさんけっこう饒舌なんだな~ということ。

理路整然と話したり、時に冗談を言ったり、楽しそうに笑ったり普通に会話したり。

それはある意味おどろきでもありました。

スタッフの方や監督と雑談するようなシーンを見るとなんら見た目は普通の人と変わりません。

あとちょっとした驚きだったのが、この診療所では患者さんがスタッフとしてはたらいていたりして、いったいどの人が患者さんでスタッフなのか一見わからなくなってしまうところです。

観察映画としての想田監督の映画は他の作品もそうなのですが、そのことに関しての説明やテロップ、ナレーションは一切ありません。なのでわかりにくいといえばわかりにくいのですが、それこそが観察映画といわれる理由でもあります。

映画の中で想田監督が患者さんの一人に「なぜこのようなビデオ(映画)を撮るのか?」と聞かれるシーンがあります。

それに監督は「精神病の世界は、健常者にとってはカーテンの向こう側にある世界だと思う。あえてそのカーテンを開けたい」と答えます。

たしかに映画を観るのが気が重いという気持ちがあったことや皆さんが普通に笑ったりしゃべったりしている姿を見て驚いているのは、カーテンのようなものがあったからなのだと思います。

一風変わったドキュメンタリー

ドキュメンタリーというのは基本的には撮影者は影を消し、できるだけカメラを意識しないような状態で撮るのが通常だと思うのですが、『精神』は患者さんが撮影者である想田さんに当たり前のように普通に話しかけています。

これは患者の方々が想田監督がいくらカメラを意識しないようにがんばっても話しかけてしまったことでこうなったようです。

でもよく考えるとカメラを向けられているのに、カメラを意識しないでそちらを見ないでいることのほうが不自然で、カメラを向けられたらそこに意識が向いてしまい、カメラを向けている人に話しかけてしまう、それこそが自然な姿であるとも言えます。

想田監督も『精神』の中では、普通に患者さんに向かって質問したりしているのですが、話しかける想田監督の声が実に映像に溶け込んでいるというかすごく自然な声で、しかも重要なことをサラッと聞いたりしているにもかかわらず、聞きだしてやろうみたいな感じもなくごく普通に会話しているという雰囲気なのも違和感がない理由かと思いました。

この作品は患者さんたちが「顔出し」をしているということがとても重要なポイントとなっているのですが、

たしかに精神病患者の方が顔出し、ある人は名前まで出して日常を撮らせる作品というのはあまり見たことがありません。

実際、撮影をOKした方々も、いざ映画が公開される日が近づくと、精神が不安定になったり、やはり公開はやめてほしいと言い出したりと、さまざまな葛藤があったようです。

それくらいありのままが映っています。

その意味ではたしかに衝撃作ですが、観る前に思っていた衝撃と見た時に感じた衝撃はまったく違った種類のものでした。

映画を観たからといって、正常と異常は紙一重だ!なんて簡単にこの映画を結論づけたくもありません。なんだかよくわからないけれど、ただ彼らの存在を観て何か言葉にできないようなことを感じるということに意味があるような気がします。

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※「精神」は2019年10月31日まで配信予定です。

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※この記事の情報は2019年2月7日時点でのものとなります。

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