「歩いても歩いても」は是枝裕和監督の2008年6月公開の日本映画です。
息子や娘、孫たちが夏休みになり、実家に遊びにやってくる。
どこにでもあるような夏のある一日。
しかし、その家族にはどこにでもある家庭とは決定的に違っていることがあった。
「万引き家族」でパルムドールを受賞した是枝監督による必見の傑作です!
あらすじ
ある夏の日、良多(阿部寛)は再婚したばかりの妻ゆかり(夏川結衣)とその連れ子とともに里帰りをする。
実家では年老いた父の恭平(原田芳雄)と母とし子(樹木希林)が2人で暮らしている。
長女(YOU)とその夫(高橋和也)も子供を連れて帰省し、久々の一家団欒。
その日は、長男の15年目の命日でもあった。
失業中な上に昔から父とそりが合わない良多の気は重かった。
母は息子が連れ子の女と結婚したことがどうも納得がいっていない。
長女夫婦は実家での同居の話を何とかつけたいと思っている。
この家族の集まりの中に、毎年、ある一人の若い男性の来客がある。
長男の命日に訪れる若い青年。
15年前、長男は海で溺れそうになっていた子供を助け亡くなったのだ。
その助けられた子供が毎年命日に訪れる。
他人の子供を助けた代わりに命を落としてしまった長男。
母は、その喪失感、やり場のない口惜しさと怒りを抱えたまま一歩も抜け出せないでいた。
どこにもぶつけられない気持ちを長男が助けた子供、毎年命日にやってくる青年にぶつける。
見どころ
一見どこにでもあるような夏の帰省で集まった家族の一家団欒。
しかし、なにげない会話を重ねる中で浮き彫りになるそれぞれの思いや心の機微を丹念に描き出していく作品。
家族は何物にも代えがたい唯一のもの。だからこそのわずらわしさや複雑な思いを見事なまでに描きだしていく。
ゴンチチの音楽も忘れがたい印象をこの作品に残します。
感想
「なんだがすごいものを観てしまった。」
というのがこの映画を見終わった正直な感想だった。
ここまで「家族」というものに対する一言ではあらわせない感情を描き出した作品はこれまで見たことがなかった。
会話を重ねていく中で、家族の間にある微妙な関係性や心の機微を表していくのは見事としか言いようがない。
同居をもくろむ長女夫婦。
それをのらりくらりとはぐらかす母。
連れ子の再婚相手をどこか面白く思わない母とそれを察する嫁
そして、この家族に決定的な影響を与えているのが15年前の長男の死だ。
いまだに兄へのコンプレックスを抱く弟。
長男に命を助けられ、毎年訪ねてくる青年に対するなんとも言えない気持ちを抱く家族。
それぞれが心の中にさまざまな感情やわだかまりを抱えている。
ふとした会話のきっかけで堰を切るように長男への思いを吐露しだす母。
樹木希林さん演じる母と夏川結衣さん演じる良多の再婚相手の嫁姑の2人が子供をどうするのかという会話するシーンは見ているこちらも息が詰まってしまうほど緊張感のあるシーンだった。
あれもこれも、挙げればきりがないほど、印象に残るシーンがたくさんある。
今回、この映画を見たのは2回目だった。
本当に面白い映画だったけれど、もし20代の時に見たら、ここまで面白いとは思えなかったかもしれない。
30代40代と年齢を重ねて、家族というものにいろいろな感情を抱くようになってから見てより深く味わえる作品なのだと思う。
出演する俳優さんすべてがすごいが、特に樹木希林さんは演技を見て鳥肌が立つというの初めて経験した作品だった。
※「歩いても歩いても」は2020年3月31日まで配信が予定されています。
配信は終了しました。
※この記事の情報は2019年9月17日時点でのものです。最新の配信状況はU-NEXT公式サイトでご確認ください。